荷物を壁側に寄せて隣をあけると、塩見くんが「ありがとうございます」と言いながら横に来た。

 どういう状況なのだ、これは。私はどんな顔をしていればいいのだろう。

 ドギマギしながらちらっと塩見くんを見ると、微笑まれながら目配せされた。普通にしていろということなんだろうが、自信がない。自分から『秘密にしておきたい』とのたまっておいてボロを出したら最低だ。気を抜かないようにしなければ。

「はじめまして、営業部の海老沢です。久保田さんとは同期仲間で」

 短髪で人懐っこそうな、久保田の隣に座った男の子が自己紹介してくれる。

「日向充希です。よく同期飲み会してるって、久保田からは聞いてるわ」

 こちらも先輩らしい微笑みを浮かべて挨拶する。すると、海老沢くんはニヤニヤしながら肘で塩見くんをつつき始めた。

「塩見、この人だろ? 前に話してた企画部の日向先輩って」

 私が「え?」と目を丸くしたのと、塩見くんが「ちょっと」と顔をしかめて海老沢くんの肩をつかんだのが同時だった。

「なになに、どういうこと?」

 久保田はちゃぶ台に身を乗り出して、海老沢くんに迫っている。そのわくわくした顔に逆らえなかったのか、塩見くんはため息をついて海老沢くんの肩から手を離した。

 お許しを得た、というように満面の笑みを浮かべた海老沢くんが、意気揚々と語り出す。