昼には静岡に着き、有名な海鮮丼のお店で昼食となった。

「わあ、広い」

 藁ぶき屋根で、古民家な造りの店の引き戸を開けると、広々とした店内が目に飛び込んできた。天井は高く、見上げると柱がむき出しになっているのがわかる。客席は板張りの高座敷になっていて、たくさんのちゃぶ台と座布団が並んでいる。囲炉裏もあるし、土間にはだるまストーブが置いてあって待っている人にも優しい。

「外に畑もあったし、雰囲気のいい店ね」
「こういうところに来ると、旅感高まりますよね~」

 靴を脱いで、久保田と席を探す。四人掛けのちゃぶ台があいていたのでそこに腰を下ろしたのだが、メニューを開く前に声をかけられた。

「久保田さんじゃん。ここ、あいてる? こっちもふたりなんだけど」
「あ、久しぶりー。あいてるよ」

 久保田に話しかけたふたり組を見て、ドキッとする。私たちの席を見下ろしていたのは、知らない営業部の男の子と、塩見くんだった。

「いいですよね、先輩?」

 久保田に問いかけられて、あわてて首を縦に振る。

「あっ、うん。もちろん」