いつもと違うシチュエーションのぶん威力も大きい気がして、警戒しながら歩いていると、この天然タラシはまた返事に困ることを言い出した。
「なんかちょっと、ペアルックっぽい感じもしますよね。ほら、ふたりとも、ニットの中に白シャツをあわせているし、コートの色も似てるし」
実は私も塩見くんの服装を見た瞬間、『まずい、かぶった?』と思ったのだ。『いやいや、定番のファッションだし考えすぎでしょ』とせっかく振り切った思考を頭に戻さないでほしい。
「い、いや、こういう服装の人なんてたくさんいるでしょ。きっと同じバスにもあと二、三人はいるわよ」
「それもそうですね」
特に感慨もなくさらっと同意する塩見くんがうらめしい。自分のなにげない言動に私が振り回されていることなんて、ちっともわかっていないんだろうな。クラッカーパーティーの日、余裕のない塩見くんを目にしたことが今では嘘のようだ。
駅についたとき、私がひそかにホッとしたことは言うまでもない。
「なんかちょっと、ペアルックっぽい感じもしますよね。ほら、ふたりとも、ニットの中に白シャツをあわせているし、コートの色も似てるし」
実は私も塩見くんの服装を見た瞬間、『まずい、かぶった?』と思ったのだ。『いやいや、定番のファッションだし考えすぎでしょ』とせっかく振り切った思考を頭に戻さないでほしい。
「い、いや、こういう服装の人なんてたくさんいるでしょ。きっと同じバスにもあと二、三人はいるわよ」
「それもそうですね」
特に感慨もなくさらっと同意する塩見くんがうらめしい。自分のなにげない言動に私が振り回されていることなんて、ちっともわかっていないんだろうな。クラッカーパーティーの日、余裕のない塩見くんを目にしたことが今では嘘のようだ。
駅についたとき、私がひそかにホッとしたことは言うまでもない。