「重かったでしょう。手伝いますよ。資料室でいいんですよね」
「え、大丈夫よ。塩見くんだって自分の仕事があるでしょう。私ほら、力持ちだから」

 力こぶを作りながら断ると、呆れた顔でため息をつかれた。

「そんな細い腕でなに言ってるんですか。こういう時くらい、男を頼ってくださいよ」

 そう言いながら塩見くんの足は動き出しているので、私もあわててあとを追う。

「……ありがとう」

 塩見くんの横に並ぶと、腕まくりしたシャツの袖から、血管の浮いた腕が見えた。さっきの私と同じくらいの量を持っているのに、ふらついていないし、顔も隠れていない。

 姿勢よく歩く塩見くんの隣で、ほんの少しの資料を抱えていると、急に自分がか弱い女子になったみたいで――胸の奥がふわふわ、そわそわしてきた。

「みんな、この状態の私を見て避けていったんだけど。声をかけてくれたの、塩見くんだけよ。普段からこんなに優しいの?」
「優しいわけじゃないですよ。重いものを持っている人がいたら助けるのが当たり前じゃないですか。若い男が役に立てることなんて、そのくらいですし」

 照れ隠しに吐いた言葉を真摯に返されて、ドキッとする。