「へえ、そうだったの。お母さんが甘酒を作ったり、お姉さんがカナッペを作ったり、塩見くん以外の家族も料理好きなのね」
「そうですね……。父がグルメなのもあって、割とみんな料理好きかもしれませんね」

 休日に、家族みんなでクラッカーパーティーをしている塩見家が目に浮かんだ。きっと実家に帰省すると、お母さんがいつもより豪華なごはんを作ってくれるようなおうちなのだろう。

「塩見くんて、合理的でスマートな判断をする人だと思っていたんだけど、実はロマンチストなのね」
「僕、そんなふうに思われていたんですね」

 そうつぶやく塩見くんの口調が、さびしそうに聞こえたことが意外だった。

「でも、そうですね。大事な局面では自分の感覚や感情のほうを頼りにするかもしれません。インスピレーションというか」
「じゃあ、私と同じね。私も計算とか、苦手だもの」
「……そうですね」
「なに今の含み笑い!」

 もう、と頬をふくらませたら、巧妙に話を逸らされた。

「僕のことより、先輩のことですよ。そういえば、結婚式はどうだったんですか」
「ああ、うん……。いい式だったよ」

 二次会での一幕が頭をよぎって、笑顔を作るのが一瞬遅れてしまった。そして、それを見逃す塩見くんではない。

「なにか、あったんですか?」

 ぴくりと肩を反応させた塩見くんはやっぱり、さっきまでと顔色が変わっている。