コスメフロアに足を踏み入れた塩見くんは、びくびくしながら目についたカウンターで相談することにした。そこがたまたま、うちの会社で出しているコスメブランドだった。

 美容部員さんは、『姉の額の傷を隠したい』という塩見くんの相談に真剣に耳を傾けてくれた。

 硬めのコンシーラーのほうがカバー力があることや、使う前には下地や日焼け止めを塗ること、コンシーラーだけでなくコントロールカラーも使ったほうがより完璧に目立たなくできること、仕上げにフェイスパウダーを使うと崩れないことも、順序よく丁寧に教えてくれた。

「予算の関係でコンシーラーしか買えなかったんですが、キレイにラッピングしてくれて、パンフレットも同封してくれました」

 誕生日にデパコスのコンシーラーを渡されたお姉さんはたいそう驚いて、さっそく使ってくれた。その後、自分のバイト代で下地やパウダーなども買い揃えたそうだ。

 それからのお姉さんは目に見えて明るくなり、好きな人に告白して無事OKをもらった。

 きっと、相手は額の傷のことなんて気にしていなかったと思う。でも、お姉さんが自分に自信を持つためには、コスメの力が必要だったんだ。