大学受験に失敗したことを親とはるに伝えなくてはならない。身内に嘘をついてもすぐにばれるし、はるに嘘をついても良いことは
ないからだ。家に帰って親に言う前に、はるに連絡をしてはると会うことにした。高校の前ではるに会った。「亮介、結果は
どうだったの」とはるが聞いてきた。俺は「それが・・・ダメだった」と言った。はるは「そっか。私がいたことで亮介がうまく
勉強できなかったのかな?」と言ってきたので俺は「いや、多分だけど試験は合格できるくらいだったんだよね」と言った。はるは
「え?じゃあなんでダメだったの?」と聞いてきたので俺は大学であったことを話した。するとはるは「そうだったんだね。名前を
書いたかどうかなんて覚えてるわけないもんね。でも大学の教授と知り合えたんだね。不幸中の幸いと言うか・・・だね」と言って
きた。俺は落ち込んでいることを見せたくなくて「まあ来年また頑張るよ!さ、せっかくだからどっか遊び行こうぜ!」と言った。
はるは俺をギュッと抱きしめて「こんな時は強がらなくていいんだよ。無理しないで泣きな」と言ってきた。その言葉を聞いて俺は
「何言ってんだよ!泣くわけないじゃん!」と言いながら泣いていた。はるは俺の頭を撫でながら「うん、来年また頑張ってね。
前にも言ったけど、私はこれくらいで亮介を見捨てたりはしないからね」と言ってきた。俺は年下に慰められるということを
恥ずかしく思い「おい、ここは学校の前だぞ。いつも言ってるだろ、TPOだって」と言うとはるは「うん、彼氏が落ち込んでいる
ときに彼女が慰めてあげるのがTPOだと思ったんだけど、違うかな?」と言ってきた。俺は「そうだな。今回は合ってるよ。でも
学校の前は恥ずかしいから勘弁してくれ」と言うとはるは「そういうところで素直になれるのはいいね」と笑いながら言ってきた。
そしてはるは「私と亮介はこれで同じ学年になるね。私も関東大学を目指そうかな?」と言ってきたので「いやいや。俺の目指す
学部は文学部、つまりはるの苦手な国語専攻だぞ?さすがにきついだろ」と言った。はるは「そうだね。さすがにきついかもね。
でも大学って色んなことを学べるでしょ?亮介と同じ学部は無理かもしれないけど、同じ大学に行くくらいいいかなって」と言って
きた。確かに色んなことを学べるけどな、と思ったが「そんなことで自分の進路を決めていいのかよ」と聞くとはるは笑って
「亮介ってどうやって関東大学を選んだの?」と言ってきたので「そりゃ、俺は芥川龍之介が好きで、好きなことを学べるから
だよ」と言うとはるは「私は亮介が好きで、亮介の近くにいれば亮介のことを学べるからだよ」と言ってきた。ここから俺とはるの
関係性はまた変わっていくだろう。俺は学校に無断では入れないので前のように部活が終わるまで待つということはできなくなる。
でもたまには会いに来ることだっていいはずだ。環境は変わっていっても、はるへの思いだけは変わらない。二人でダメなところは
言い合って成長していこうと思えた。思えばはるとは色々とあった。デートでは失敗ばかりだったが全て笑って許してくれたし、
はるの家に言った時はすごく緊張した。雅之とみくちゃんだって俺たちのおかげで知り合えたわけだし、あの二人もこれからは
無事に成長していくのかもな、と思った。ふと空を見上げると太陽が照り付けてきた。これからも頑張れってことなのかな。