今日はクリスマスイブだ。こんな日に彼女と出かけない選択肢はない。だがはるはクリスマスなんて関係がなく部活のはずだ。
学校は終業式の近くなので午前中で終わった。はるの部活が終わるまで待って、その後二人でデートでもするかな、とぼんやりと
考えていた。具体的なデートプランを考えようかと思ったがやめた。俺のデートプランはうまくいかないことが多いからだ。そこで
がっかりしてはるに変な気を遣わせたくもない。それにクリスマスだからと言って特別な場所に赴く必要もないと思った。とはいえ
ディナーを一緒に食べて、イルミネーションを見に行くくらいはしてもいいかもしれないな、と思った。幸いなことに学校からそう
遠くないところに大きな駅があるので、駅前に行けば大体のことはこなせるだろう。そして学校は特に何もなく終わっていく。
放課後になりはるの部活を見に行こうとすると雅之が「亮介、今日はクリスマスだよな。はるちゃんとどっか行くのか?」と
話しかけてきた。俺が「具体的にどこに行こうっていう話はしてないけど多分な。お前はみくちゃんとどっか行くの?」と
聞き返すと「おいおい、そんなんで大丈夫かよ。お前とはるちゃんにとっても付き合って初めてのクリスマスだろ?男がびしっと
決めてやらないとな。あ、俺はもう完璧だよ。この日のために二週間くらい前から綿密な計画をだな・・・」と言ってきたので
雅之が計画を頑張るとあんまりうまくいかないんだよなぁと思いながらも頑張ったことを馬鹿にするわけにもいかないので
「そっか。まぁ頑張ってくれよ。お互いいい思い出作ろうな」と言って俺は教室を出ようとした。すると教室の前にはるがいた。
あれ?これから部活なんじゃないのか?と思いはるに近づくと「今日はクリスマスでしょ?こんな日に部活なんて
やってられないって。デート行こ?」とはるが言ってきた。ここで元部活の先輩としての俺であればきちんと部活には出るべきだと
言うのが正しいだろう。だがはるがこうして自分で考えてわざわざ教室まで俺を迎えに来てくれたことを無下にしたくはないし、
色々と思うが一番は俺もはるとデートがしたいのだ。なので俺は「部活はきちんと出なきゃダメだろ。・・・明日からな」と
言った。はるが笑いながら「亮介のことだから部活に出ろって言ってくるかと思ったよ」と言ってきたので俺は「はるが俺に
告白してくれた時に俺が返した言葉、忘れたの?」と言った。はるが「えっと、これからは部活の後輩としてじゃなくて女として
見るって・・・あ、そういうこと?」と言ってきたので「そうだよ。彼女が俺のために無理して時間を作ってくれることに対して
反対するなんてかっこ悪いだろ?部活の先輩としては部活には出てほしいけどな」と言った。はるは笑いながら「もう。そこまで
考えてたの?」と言ってきたので俺は「いや、そこまで考えてなかった。単純に嬉しかったからさ」と言ってお互い笑い合った。
はるが「デートなんだけどどこ行こうか?あ、もしかして亮介のことだからデートプランとか考えてるの?」と言ってきたので
俺は「いつもならそうしちゃうんだけど、俺のデートプランって成功しないじゃん。だから今日は何も考えてないよ、ごめんね」と
言った。はるは「そっか、謝らなくてもいいのに。じゃ、近くの大きな駅でプラプラして何か探そうか」と言ってきた。なので
「うん、俺もそんな感じでいいかなって思ってた。あ、ちなみに今日はディナーくらいまでは一緒にいたいなって思うんだけど
平気かな?」と言った。はるは「うん、大丈夫だよ。親に連絡しておくね」と言った。俺が「とりあえずお昼でも食べに駅の方に
行こうか」と言うと「うん、そうだね。あ、クリスマスだからって気合の入れたものを食べようなんて考えなくていいからね?」と
はるが言ってきた。高校生だからそんな高級なお店に行けるわけはないしな、と思い「じゃあ、牛丼でも・・・」と言うとはるが
「牛丼はおいしいから食べたい気持ちはわかるけど、もう少しゆっくりできるところがいいな」と言ってきた。なので「はいよ。
じゃあファミレスでも行くか」と言うと「いいね。それくらいの気楽さでいいんだよ」と言ってきた。「それにファミレスの中で
どこに行くか話せばいいしね」とはるが続けてきたのでよく考えてるな、なんて思った。そして俺とはるは駅の近くにある
ファミレスへと向かった。クリスマスということもあってファミレスも少し混んではいたが、待たずに座れた。そしてご飯を
食べながらどこに行こうかと話をしているとはるが「別にクリスマスだからって特別な場所ばっかり行かなくてもいいと思うの。
テーマパークに行ったりとかそんなんじゃなくて、普通のデートをしよ?」と言ってきた。確かに肩ひじを張ってすごいところに
行って楽しめませんでした、じゃ意味はないしそもそも高校生の身分でそんなにすごいところに行けるわけもない。お金だって
限りはあるわけだし。なので俺は「じゃあ、カラオケでも行くか。んでウインドウショッピングしてゲーセンで遊んだりもして、
いい時間になったらディナーに行って・・・」と言ったところで少し止まってしまった。俺としてはイルミネーションを見に行く
ことも考慮に入れていたがそれは特別なことになるのか?なんて思っているとはるが「そんな感じでいいと思うけど・・・
どうしたの?」と聞いてきた。「俺としてはその後少しだけイルミネーションを見るのもいいかな、なんて思ったんだけどこれって
特別なことになるのかな?」と聞くとはるは笑いながら「特別なことはしたくない!って言ったわけじゃないんだから別に少しは
特別なことしてもいいじゃない」と言ってきた。特別なこと、という言葉にとらわれすぎていたようだ。「じゃあ、えっと、
ディナーのあと、イルミネーションでも見に行きませんか?」と言った。はるは笑いながら「はい、喜んで」と言ってくれた。
ファミレスでランチを済ませたのでその後は予定通りに遊んだ。カラオケに行って楽しんだ。はるのために歌えるようになった
曲も何曲かあったので披露するとはるが「もしかして、今日のために練習してくれたの?」と聞いてきた。なので俺は「たまたま
はるに披露するタイミングがクリスマスってだけだよ。俺にはクリスマスを意識しないように、みたいなことを言ってるくせに
自分は意識してるのかよ」と言った。はるは笑いながら「そうだね。でも女の子なんだからクリスマスを意識してもいいじゃない」
と言ってきた。いつもの俺ならここで裏を読んでつまりはクリスマスだから意識せずにかっこいいことをしろってことか?などと
考えてしまったかもしれないが裏を読みすぎるといいことはないと学んだので今日は「そうだね」と返すだけで終わった。
そしてカラオケを終えてウインドウショッピングをしていると、ふと可愛いネックレスが目についた。値段を見るとそれほど
高くはない。これははるに似合うかもしれないな、と思いながらぼーっと見ているとはるが「どうしたの?」と聞いてきた。
なので俺は近くにいた店員さんを「すいません」と呼んだ。店員さんが近づいてきたので「このネックレス、この子につけて
みたいんですけどいいですか?」と言った。はるはえ?どういうこと?と言った様子でこちらを見ていたが俺は意に介さなかった。
そして店員がはるにネックレスをつけた時点で俺は「うん。やっぱりよく似合うな」と言った。はるは驚いた顔をしながらも
「あ、このネックレスが私に似合うかもって思って見てくれてたの?でも、ちょっと恥ずかしいな」と言ってきたので俺は店員に
「すみません、このネックレスください」と言った。はるは驚いて「ちょっとちょっと、何言ってるの?」と言ってきた。だが俺は
反応せずに店員さんとのやりとりを続けた。はるが「あ、もしかしてクリスマスだからって私にプレゼントをしようと
思ってるの?」と言ってきた。俺はそれも聞かずにネックレスの購入を済ませた。そしてはるに「そのネックレス、俺のなんだ
よね。だから俺がどうするかは俺の自由だよな?」と言った。はるは「あ、そうだね。じゃあ外すからちょっと待ってね」と言って
きたので俺は「かっこいい渡し方はできなかったけど、俺からのクリスマスプレゼントだよ。できればもらってほしいんだけど
どうかな?」と言った。ネックレスを外そうとしたはるは驚いた顔をして「え、いいよ。亮介のでしょ?亮介が大事にすれば
いいじゃん」と言ってきたので俺は「だから、さっき聞いたじゃん。俺のネックレスをどうしようが俺の自由だよなって。そしたら
はるはそうだねって言ったよな?じゃあ俺の自由だな、もらってくれる?」と言った。はるは「もう。そういうところが好き。
一生大事にするからね」と言って抱き着いてきた。なので俺が「ごめんね。ネックレス返そうとしてたけど気に入らなかった?」と
聞くと「そんなわけないじゃん。私の好きなデザインだし、好きな人からもらったものだよ?最強だよね」と言ってきた。俺は
あげて良かったな、と思った。そしてはるは俺から離れると「本当はこのタイミングじゃない時に渡そうと思ったけど・・・」と
言ってカバンからブレスレットを取り出した。だが同じものが二つ入っていたので俺が「あれ?同じのが二つ入ってるよ?」と
言うと「そりゃカップルなんだからブレスレットくらいお揃いでもいいでしょ。嫌だった?」と言ってきたので今度は俺の方から
はるに抱き着いて「嫌なわけないじゃん。一生大事にするよ、ありがとう」と言った。そして顔を見つめ合ってお互い笑った。
そしてウインドウショッピングが終わったあとはぶらぶらとしていた。ゲーセンで少し遊んだりしているうちに良い時間になった。
なので俺は「はる、ディナー行かない?」と言った。はるは笑って「夕飯、でいいしょ。ディナーとかかっこつけすぎだよ」と
言ってきた。なんだよ、と思いながらもディナーの場所はざっくりと決めていた。近くにあるイタリアンのお店だ。イタリアンなら
落ち着いて食べられるだろうし緊張もしないしいいだろうと思った。そしてはると一緒に向かった。クリスマスなので少し待つかと
思ったが混む前の時間だったようですぐに座ることができた。そしてイタリアンを食べながらはると話をした。そこで俺は覚悟を
決めて言ってみた。「はる、俺の部活引退の日に告白をしてきてくれて本当にありがとう。告白してくれた時、正直迷っていた。
俺とはるはあと少しで学校もわかれてしまうし、はるは俺の部活での姿に惚れて告白をしてきてくれたのだと思ったから」。はるは
「じゃあ、なんであの時OKしてくれたの?」と聞いてきた。俺は「だって、はるのこと好きだったから」と言った。はるは
「え?じゃあなんで迷ったなんて言ったの?」と聞いてきた。なので俺は「どんな迷いがあっても好きだってことだよ」と言うと
はるは笑って「それにしては私の告白にフェイクかけたりしてたくらいだから冷静っぽかったけどね」と言ってきたので俺は
「あれが素なんだよ。めんどくさい男でごめんな」と言った。はるが「で?じゃあ今は私のことは好きなの?」と聞いてきたので
「当たり前だろ。今は、じゃなくてずっと、だけどな」と言った。はるは笑いながら「その点は私も一緒だよ。ずっと愛してるよ、
亮介」と言ってくれた。俺とはるの心は初めて完璧に通じ合った。そしてディナーを終えた後、外に出てイルミネーションのある
広場へと向かった。そして二人でイルミネーションを見ていた。きれいだな、なんて思っているとはるが「あ、ねえ亮介。
さっきご飯食べてる時に亮介が一つだけ間違ってたの」と言ってきた。なにか間違ったのか?と思い「何が?」と聞くとはるは
「私が亮介を知ったのは部活でだけど、好きになったのは部活での姿じゃなくて部活外でもかっこよかったからだよ」と
言ってきた。思い当たる節はないがそんなことを言われたら照れる。