はるが告白をしてくれた日のこと。家に帰ってはるに連絡をした。「今日はありがとうね。これからは後輩じゃなくて彼女として
見ていくからよろしくね」。はるからすぐに連絡があって「こちらこそ告白を受けてくださって本当にありがとうございました。
先輩は本当に私のことを好きでいてくれてますよね?」と書いてあった。俺はよく意味がわからなかった。好きじゃなかったら
告白を受けるわけないのにな、と思い俺はそのことに返事をせずに別の話題を振ってその日は終わった。そして翌日のこと。
俺は部活がなくなったので授業が終わった時点で帰ろうかと思ったが、せっかく彼女ができたのだから一緒に帰るべきだよな、と
思いはるの教室へと向かった。するとはるは「あ、先輩。どうしたんですか?」と言ってきたので俺は「いや、せっかく彼女に
なってくれたんだから一緒に帰ろうかなって思って」と言った。するとはるは「あ、そうだったんですね。でもごめんなさい、私は
部活があるので・・・」と言ってきた。なので俺は「そっか。じゃあ部活が終わるまで待ってるよ」と言った。はるは驚いて
「いやいや、そこまでしていただかなくて大丈夫ですよ!」と言ってきたので俺は「俺に待たれるのは嫌なの?」と言った。
はるは「嫌なわけないじゃないですか。でもご迷惑かなと思いまして」と言ってきたので「迷惑だと思ってるなら自分からこんな
提案しないっての。はしっこで座って見てるだけだから気にしないでね」と返した。はるはやっと折れたようで「じゃあ、はい。
でも帰りたかったら好きな時に帰ってくださいね」と言ってきたので俺は「はいよ。たまたま帰りたくなる時がはると同じかも
しれないけどね」と言った。はるは少し笑って「もう」と小さくつぶやいた。そしてその日の部活が始まった。俺は横に座って
部活の様子を見ていた。と言っても昨日までやっていたことなので目新しさはほとんどなかったが、新しい部長の指示の元
みんな頑張っているようだ。あっという間に部活の時間が終わった。そしてみんなが片づけをしているので俺も少し手伝った。
後輩たちは恐縮していたが、これくらいならいいだろうと思ったからだ。そしてはるに「じゃあ帰ろうか」と声をかけた。
そして一緒に帰り始めたのだが、はるの様子が少し変だった。元気がないというか、少しおかしな感じがしたので俺ははるに
「どうしたの?今日の部活で何かあったの?」と聞いた。はるは「いえ、そんなことはありませんでしたよ?先輩も見ていた通り
いつも通りでしたよ」と言ってきたので俺は「それにしてはなんか元気なくない?大丈夫?」と聞いた。するとはるは少し黙った
後に意を決したように口を開いた。「あの・・・私って本当に先輩の彼女でいいんですか?」。俺は意味がわからなかった。
昨日告白をされて、オーケーを出したんだから良いに決まってるじゃないかと思い「え?どういうこと?」と聞いた。するとはるは
「私は先輩のことが好きです。部活中もすごく優しく教えてくれたし、頼りになるし。今日だって私の部活が終わるのをわざわざ
待っててくれたじゃないですか」と言ってきた。俺は「そんな風に言ってくれてありがとうね。でも俺としては普通のことを
してただけなんだけどな」と言うと「そのことを普通だと言えるところがかっこいいんですよ。気づいてませんか?」とはるに
言われた。そんな風に思ってくれることはありがたいが、自分のことを「俺はかっこいいからな」なんて思えるわけもないので
「まあありがとうね。それでどうしたの?」とはるに聞くと「私のどこを先輩が好きになってくれるのかなって思ったんです。
私は昨日先輩に告白しました。先輩は応じてくれましたけどそれってただ彼女が欲しかったから、とか、女であれば誰でもいい、
とかそんなんじゃないかなと思って」と言ってきた。俺は少しイラっとした。そんな理由で付き合うことを許可するわけがないじゃ
ないか、そういう男も中にはいるかもしれないけど・・・と思ったがここで言い返すだけでは意味がないと思ったので俺ははるに
「へー。つまりはるは俺のことをそういう男だと思ってるってことだね」と言った。はるは自分の言ったことが良くなかったと
気づいたらしく手で口を押さえながら「いえ、そんなことは全く」と言ってきたので俺は「つまり、そういうことだよ。俺は
そんな女なら誰でもいい、みたいな男じゃない。俺にだって選ぶ権利くらいあるんだからさ」と言った。はるはまだ納得がいかない
ような顔をして「じゃあ、どこが」と言ってきた。俺は「よし、じゃあはるの好きなところを今から一つずつ言っていくからね。
まずは優しいところ。次に度胸があるところ。部活に真剣に取り組んでいる姿が愛らしいところ。気遣いのできるところ。
俺を頼ってくれるところ。それから見た目が・・・」と言った時点で「ちょっとちょっと!待ってください!」と言ってきた。
俺が「え?まだまだたくさんあるけど?」と言うとはるは「もうお腹いっぱいですから。わかりました、私のことを好きでいて
くれてありがとうございます!」と言ってきた。俺は笑いながら「伝わってよかった。こういうことはちゃんと口に出さないと
伝わらないね。まあ自分の考えていることだから当たり前だけどね」と言った。はるは「でも私の元気がないって気づいてくれた
じゃないですか。そういうところも好きです!」と言ってきた。俺は「そりゃ好きな人の元気がないことくらい彼氏なんだから
気づいてあげなきゃね。俺も好きだよ」と言った。はるは顔を真っ赤にして「好きって口に出されたのは初めてです。嬉しすぎて
どうしよう」と言っていた。俺は「これからこうやって嬉しすぎることを二人で積み重ねていこうね。あ、そうだ」と言った。
はるは「なんですか?」と言ってきたので「彼氏彼女の関係になったのに、敬語はおかしいんじゃない?」と言った。はるは
自分が敬語を使っていたことに気づいたようで「あ、そうですね・・・。そうだね、気を付けるよ」と言ってきた。それを二人で
笑いながら俺は「あともう一個ね。昨日言ったことと矛盾してるところがあるんだけど」と言った。はるが「矛盾?なに?」と
言ってきたので「先輩後輩の関係性じゃ嫌なんでしょ?じゃ、俺の呼び方をいつまでも先輩って呼ぶのはおかしいよね」と言った。
はるは照れながら「わかったよ。これからは名前で呼ばせてもらうね、亮介」と言ってきた。今度は俺が照れた。