ある日、はると一緒に帰っているときのことだ。はるが「亮介、ちょっといい?」と言ってきた。俺は何かあったのか?と思い
はるに「どうしたの?」と聞くとはるは「もうすぐテストがあるでしょ?だけど私、国語のテストに自信がなくてね」と
言ってきた。俺は国語で大学を目指しているくらいだから国語は得意だ。なのでそうなんだな、と思い聞いていると「受験生の
亮介にこんなことお願いするのは良くないってわかってるの。だけど少しだけでいいから、私に国語教えてくれないかな」と
言ってきた。なので俺は「もちろんいいよ」と言った。はるは「本当に?いいの?私のために時間を使っちゃって大学に落ちたとか
言わないでよ?」と言ってきたので「人に教えるのだって勉強になるんだよ?それに受験って高三の問題だけ出るわけじゃない
んだからさ、俺の復習にもなるよ」と俺は言った。はるは「じゃあ、お願いします」と言ってきた。ここかれ俺とはるは授業が
終わると図書室に行って勉強をすることになった。はるが問題を解いている間、俺も勉強をしているので無駄な時間にはならないし
何よりはると一緒にいられるということが嬉しかったのでむしろ気持ちとしてはプラスなくらいだ。そんなある時、図書室で
勉強をしていると声をかけられた。「あれ?中井じゃん。何してるの?」俺が振り向くとそこには同じクラスの女子が。俺は
現在のことを伝えるとその女子は「マジで?あ、そういえばもうすぐテストじゃんね。私も国語やばいんだけど・・・一緒に
教えてくれないかな?」と言ってきた。俺は正直微妙な気持ちになった。はると二人で勉強をしているこの空間が楽しかったので
誰かに邪魔されるようなことはしたくないな、と思っていたからだ。ふとはるを見ると「亮介が負担にならないならいいんじゃ
ないのかな?それに亮介もテスト勉強はしておいた方がいいと思うし」と言ってきた。それはそうなのだが。はるに賛成された
以上俺が断っては男が廃ると思い俺は「教えてやるからここに座れよ」と言った。こうして三人での勉強が始まった。
二人がわからないところには俺が教えてあげるというようなスタイルが多かった。が、クラスの女子が思った以上に国語が
できなかったのでほぼつきっきりになってしまっていた。はるに申し訳ないな、と思いつつも女子に教えていた。
それから二日経ったときのこと。そろそろ帰るか、と思いはるに「そろそろ帰ろうか」と言うとはるは「私は一人で帰るよ」と
言って先に図書室から出ていってしまった。クラスの女子はそれを見て「なんかはるちゃん怒ってなかった?追いかけた方が
よくない?」と言ってきた。俺は言われるまでもなく急いで支度をしてはるを追いかけた。そしてはるに追いついて
「どうしたの?」と聞いてみた。するとはるは「別に。亮介はあの子にもっと教えてあげたらいいんじゃないの。じゃあね」と
言って行ってしまった。俺は勉強が苦手だというはるとクラスの女子のためにできうる限りのことはした。なのになぜあんな
言われ方をしなければならないんだと少し腹を立てた。なのでもういいと思い、学校に戻って図書室に行き、クラスの女子に
引き続き勉強を教えた。帰り道も途中までは一緒だったので、一緒に帰りながら勉強を教えた。翌日もはるは勉強のために
図書室には来た。だが自分の勉強が終わるとまた帰ってしまった。それを見たクラスの女子は「大丈夫なの?
なんかあんまりいい雰囲気じゃなかったけど」と言ってきた。俺も意固地になってしまい「別にいいんじゃない。
お前はお前の心配だけしとけよ」と言った。そんな調子で日にちは経って数日後、テスト本番の日だ。
俺は自分の勉強は欠かしていなかったのでテストには十分に望むことができた。はるは大丈夫かな、なんて思いながらもテストは
無事に終わった。そして数日後、テストの結果が返ってきた。俺の結果はほぼ満点で、我ながらよくできたなと思っていた。
すると勉強を教えていたクラスの女子が近づいてきて「中井!めっちゃいい点とれたよ!ありがとう!」と言ってきた。テストの
点を見せてもらうと正直に言って俺からすると割とがっかりするレベルの点数なのだが、女子にしてはいい点だったのだろう。
教えた甲斐があったな、と思ってその日の授業は終わった。そして放課後、はるの教室に向かった。そしてはるに
「テストの結果はどうだった?」と聞いた。するとはるは「国語はね・・・。クラス内の順位が・・・」と言って指を一本
上にあげた。俺は最初理解ができずにいたがすぐに気づいて「え?まさか」と言うと「一位だったよ!亮介のおかげだよ!」と
言ってきた。俺は驚いた。国語が苦手だと言っていたはるがまさか一位を取るなんて。そんなに俺の教え方が良かったのか?と
少しうぬぼれた考えを持っているとはるが「実はね。謝らなきゃいけないことがあるの」と言ってきた。なんだ?まさかカンニング
でもしたのか?と思い「何かあった?」と聞くと「途中から亮介のクラスの女子が勉強教えてって言ってきたでしょ?最初は
教えてあげなきゃダメだなって思ってたんだけど、亮介がすごく熱心に教えてるの見て・・・嫉妬しちゃった」と言ってきた。
あ、まさかと思い「え?じゃあ途中から先に帰ったりしてたのは・・・」と言うと「うん。自分の気持ちの整理がつかなくてね。
だからあんな態度になっちゃったの。ごめんね」と言ってきた。そういうことだったのか、と思い納得した。が、ここで俺が
謝ってしまってはおかしくなるなと考えていると「でもね、私だって教えてもらってるんだもんってことを証明するためにテストを
すごく頑張ったの。その結果が一位なんだよ」とはるが言った。じゃあ結果オーライなのか?と思っているとはるが「まぁ私の
結果だけが良くたって仕方ないんだけどね。ごめんね亮介、今日からは一緒に帰ろ?」と言ってきた。とりあえずはいいのかな、と
思ったが俺ははるに「そうだね。でも一つだけ言わせてほしい」と言った。はるは「なあに?」と言ってきたので「確かに俺は
クラスの女子に勉強を教えたよ。だけどそれははるに良いところを見せたかったからなんだ。だから全てははるのためなんだよ」
と言った。はるは笑って「そうなの?でも亮介の良いところはたくさん知ってるよ?」と言ってきた。俺は「そう言ってくれるかも
しれないけどさ、良くないところを見せたくないからね」と言った。はるは「そっか。そうだったんだね、なんかごめんね」と
言ってきたので俺は「国語の点数は良くても、俺の気持ちの理解はまだまだみたいだね」と言った。はるは笑いながら「それに
ついてはこれから勉強していくから、教えてね」と言ってきた。