ある日のこと、はると一緒に帰るかと思いはるの教室へ向かった。するとはるがクラスメイトと思われる男と話していた。
何やら親し気に話している様子を見て、俺はいい気分にはならなかった。だがここで怒って教室に入っていってもかっこ悪いし、と
考えているとはるがこちらに気づいた。そして先ほどの男に何かを告げるとこちらにきた。「亮介、お待たせ。一緒にかえろっか」
と言ってきた。ここで普通のリアクションができていたなら何も問題にはならなかったのかもしれないが俺は「ああ」とやや冷たく
言ってしまった。するとはるがそれに気づいて「何かあったの?」と聞いてきた。俺はぶっきらぼうに「別に」と言った。はるは
少し考えた後に何かに気づいたようで「あ、もしかしてさっき他の男の子と話してたから?あれはクラスメイトだからしょうがない
でしょ」と言ってきた。ここでそうだね、と言えれば良かったのだが俺は「その割にはずいぶん親し気にしてたけどね」と言って
しまった。それを聞いてはるは「だって浩司・・・あ、さっきの男の子ね、とは小学校から一緒の幼馴染だからさ」と言ってきた。
俺はそれに対して「へー。彼氏でもない人を名前で呼び捨てにするんだね。それに幼馴染だから、俺よりはるのこと知ってるん
じゃない?」と言った。はるは「だって昔からの呼び名だし・・・。なんでそういう風に言うの?もういい。今日は一緒に
帰るのやめよ」と言ってはるは先に行ってしまった。ここで追いかけて気の利いた一言でも言えればよかったのだが今の俺には
そんな余裕はなく、そのまま一人で帰ることになった。その帰り道に俺はクラスメイトの女子と会った。その女子から
「あれ?今日は一人で帰ってるんだね。いつもは友達か彼女と一緒じゃん」と言われた。なので俺は「別に。そういうときも
あるだろ」と言った。すると女子は「じゃ、今日は私が一緒に帰ってあげるよ。その代わりジュースでもおごれよ?」と
言ってきた。一人で帰るのは寂しかったのでちょうどいいかな、と思い一緒に帰ることになったが、その時俺はふと気づいた。
「あれ?俺が女と二人で歩いてる状況ってはるからしたらいい気はしないんじゃ?」。と言ってここで女子にいきなり何かを
言うわけにもいかない、お前だけ帰れなんて言ったらおかしいしはるに直接何かを言われたわけでもないのに「彼女が・・・」
なんて言うのはおかしいし・・・と思いながらも学校の近くの駅に着いた。すると女子は「私はこっちだから、じゃーねー」と
いなくなった。ここで俺はようやく一息ついた。そして今日のことを冷静に考えてみた。はるは確かにクラスメイトの男と
話をしていた。だが男の方から話しかけてくる可能性なんて十分にあるはずだ。それなのに少し話したくらいで怒っていいのか?
それに仮にはるの方から話しかけたとしてもクラスメイトなんだから用事なんて十分にあるはずだ。そこで幼馴染なんだから
少し盛り上がる、なんて全然あり得るだろう。かたや俺はどうだ?自分ははるが先に帰ってしまったことに対して腹を立てて
追いかけもせず、クラスメイトの女子と一緒に帰る・・・。このことをはるが知ったらいい気になるだろうか?そんなわけは
ないよな、と思い俺は翌日にはるに謝ることを決心した。メールや電話で謝らなかったのは、自分の思いをちゃんと伝えたかった
からだ。そして翌日。俺は朝早く起きて学校へ向かった。校門の前ではるを待って謝りたかったからだ。そして8時には校門の
前に着いた。はるをじっと待つ。するとはるがやってきた。昨日教室で見かけた男と一緒に歩いている。昨日までの俺なら
この時点でぶち切れていたところだが、今日は冷静だ。そしてはるがこちらに気づいた。男と一緒に歩いていたので
バツの悪そうな顔をしている。そして校門の前で俺に「おはよう」と言ってきた。それに対して俺は「おはよう。話したいことが
あるんだけどいいかな?」と言った。するとはると一緒に歩いてきた男が「あれ?もしかしてはるちゃんの彼氏っすか?」と
言ってきた。俺は「そうだよ」と言った。その男は「はるちゃんのこと大事にするのはいいことだと思うんすけど、もうちょっと
自由にさせてあげましょうよ。ここまで来る間もあなたの愚痴がすごかったんすから」と言った。続けて「あ、ちなみに俺は
大事な彼女がいるんで、はるちゃんのことはこれっぽっちも興味ないっすからね」と言ってきた。「ま、あとはお二人で仲良く
やってください」と告げてその男は学校へ行った。俺ははるに「昨日はごめん」と言った。はるはそれに対して
「何がごめんなの?」と言ってきた。俺はああ、怒ってるよなと思い「さっきの男と少し話してたくらいであんな風に言って
ごめん。俺だってクラスの女子と話すくらいあるのに」と言った。はるは「わかってくれたならそれでいいよ。おしまいね」と
言ってきた。俺は昨日クラスの女子と一緒に帰ったことが申し訳なくなり「実は昨日、帰ってる時にクラスの女子と会って」と
言うとはるは「その子と一緒に帰ったんでしょ?知ってるよ」と言ってきた。なんで知ってるんだ?見てたのか?と思い俺は
「え?なんで知ってるの?」と言った。はるは「私の友達がたまたま見てたの。彼女と喧嘩したその日に別の女に会うとか
そこだけ聞いたら最低だよね」と言ってきた。俺は反省して「ごめん」と言うと「亮介が嫉妬深いのは、嬉しいけど少し困るかも。
でもその辺はこれから二人で話し合って決めていこ?」と言ってきた。俺はこの子に勝てそうもない。恋愛に勝ち負けは
必要ないけどね。俺ははるとの心の距離が少し縮まったことに感謝した。はるのおかげだけどね。