「見えました、あれです…っ!」
声と共に指を指す。その方向へ目をやると、とても信じがたい光景が映った。
いくつもの青白い光。まるでこの世をさまよう魂のようなソレは、上下にゆらゆらと動きながら木々の合間を縫っていた。とっさにカメラを構え、夢中でフラッシュを焚く。
すごいすごい、これは大スクープだ!合成や加工の心霊写真とはわけが違う。これは紛れもない現実で、目の前の狐火は触れば火傷しそうなほどリアルだった。
ルポライターをはじめて四年。ついに俺も一人前の記者の仲間入り…!
と、その時。突然、茂みの中から狐火がこちらに向かって飛んできた。敵だと思われたのだろうか?それとも、アレが噂の正体で、当たると魂を吸いとられるのか?
「危ない!」
無意識に隣の女性を庇った。肩を抱き寄せて狐火を避けると、目の前の光が一瞬で消える。まるで狐につままれたかのような感覚に襲われた。
胸元で小さく聞こえた吐息。ばっ!と距離をとり、慌てて声をかける。
「すみません、勝手に…!怪我はありませんか」
「はい、大丈夫です。ありがとうございます。その…結構力が強いんですね」
「えっ?あ、あぁ。学生時代はサッカーに打ち込んでいた根っからの体育会系でしたし、これでも男なので…」
