祓い屋門澤は助手などいらない


「では、またのお越しをお待ちしております」

 明くる日。十時にチェックアウトをした。例の青年はというと、番頭が出勤するなり律儀に追加料金を払い、ちゃっかり隣に並んで朝食まで食べた。
 鞄一つで横に立つ彼は徹夜で仕事を終えたそうだ。

「はぁ、なんだか楽しかったかも。こんな経験あんまりできないですよね」
「呑気なヤツだ。馴れ馴れしく構ってくるな」
「話しかけるくらいいいじゃないですか。これも何かの縁ですし」

 相川という名字の人間は、みんなこんなに社交的なのか?綾には弟がいないし遠縁というわけでもなさそうだが、彼女の顔がチラついてかなわない。

「あの、門澤さん。ひとつ提案があるんですけど」
「断る」
「まだ何も言っていないじゃないですか」
「どうせくだらないことだろう」

 雑にあしらったものの、諦める気はないようだ。彼は勝手に喋りだす。

「俺の仕事、怪奇現象のルポライターなんですよ。良かったら、門澤さんのお仕事に同行させてもらえませんか」

 何を言い出すんだこいつは。その魂胆はわかっている。祓い屋なんていう妖を追う業をなりわいとしてる俺に興味を持って、ネタを仕入れる気なのだろう。
 命の危険が伴うのにカメラを離さなかったプロ意識の高さから遊びでやっているわけではなさそうだが、気に食わない。