浄化された妖は形もなくなり、この世から完全に消えたようだ。ふたり残された部屋は、何事もなかったかのように静まり返る。
チカチカと軽く電灯の紐を引かれ、明るいところで見ると、そこにいたのはやはり昨日の“柴犬”だった。
「お前、どうしてここに居る?」
「いやぁ。今朝、靴を取りにきたんですが、狐火のスクープだけじゃあインパクトがないなって思いまして。取材を続行しようかと」
おかげでいいのが撮れたと言わんばかりに見せつけられたカメラには、結界の中にとらえられた白狐が鮮明に映っている。
こいつ、あの騒ぎの中でよく仕事できたもんだ。俺が奴を押し倒している最中にフラッシュを焚かなかったことは褒めてやろう。
「祓い屋って本当だったんですね。初めて見ました。それにしても、どうして抵抗しなかったんです?やっぱり美人だったから?」
「お前と一緒にするな。知り合いに化けられた上に名前を言い当てられたから驚いた。それだけだ」
「白狐は記憶を盗むらしいし、名前くらい宿泊名簿でバレるでしょうに…もしかして昔の彼女ですか?」
「うるさい」
