「本当にそれでいいのかな……」

 畳の上にぺたんと座り込んだ千歳は、凌真にもらった資料を見下ろしながらつぶやく。

 たしかに自分が首を突っ込む話ではないと思う。
 なぜか職と恋人を失ったあの夜から、あやかしの姿が見えるようになったけれど、悪いあやかしの追い払い方なんてわからないし、はっきり言って怖い。
 凌真の言うとおり、普通の物件に引っ越して、普通の職場に転職した方がいいのかもしれない。

 今までのことは、全部忘れて――

「でも……」

 もしその狐が、また人間を陥れようとしたら……それを放っておくことなんてできない。

「ああもう……どうしたらいいのよっ」

 千歳は頭を抱え込んだ。