雪女が501号室を契約したあと、特に変わったことは起こらなかった。
あいかわらず来店するお客さんはいなくて、一週間後、雪女が引っ越してきた。
そしてその翌日、眠っていた千歳はドアを乱暴に叩く音で起こされた。
半分寝ぼけたまま、目をこすりながらドアを開けると、そこには凌真が立っていた。
「これ」
「え、なんですか?」
千歳はぼうっとした頭のまま、凌真から数枚の紙を受け取る。
「女のひとり暮らしでも安心なオートロック付きのマンション、日当たりがよくて治安もよくて家賃の安いとこ、何軒か引き抜いておいたから。もちろん人間用のな」
それはパソコンで検索して見つけた、他社の物件資料をプリントしたものだった。
「気に入った物件あったら教えて。俺がかけ合うから」
それだけ言って帰ろうとする凌真を引き止める。
「ちょっと待ってください!」
「なんだよ。仲介料取らないから心配するな」
「そうじゃなくて! 私、引っ越すとは言ってません!」
凌真が振り向いて、じろっと千歳を見下ろす。
あいかわらず来店するお客さんはいなくて、一週間後、雪女が引っ越してきた。
そしてその翌日、眠っていた千歳はドアを乱暴に叩く音で起こされた。
半分寝ぼけたまま、目をこすりながらドアを開けると、そこには凌真が立っていた。
「これ」
「え、なんですか?」
千歳はぼうっとした頭のまま、凌真から数枚の紙を受け取る。
「女のひとり暮らしでも安心なオートロック付きのマンション、日当たりがよくて治安もよくて家賃の安いとこ、何軒か引き抜いておいたから。もちろん人間用のな」
それはパソコンで検索して見つけた、他社の物件資料をプリントしたものだった。
「気に入った物件あったら教えて。俺がかけ合うから」
それだけ言って帰ろうとする凌真を引き止める。
「ちょっと待ってください!」
「なんだよ。仲介料取らないから心配するな」
「そうじゃなくて! 私、引っ越すとは言ってません!」
凌真が振り向いて、じろっと千歳を見下ろす。