「こちらのお部屋になります」

 ドアを開き、照明をつけると、部屋の中が柔らかい灯りに照らされた。

 落ち着いたブルーの壁には、青いステンドグラスのウォールライト。リビングには同じデザインのペンダントライトもつけてもらった。
 最近ネットでよく見るデザイナーズマンション「風」な仕上がりだ。

「わぁ、素敵なお部屋ね」

 雪女の顔がふわっとほころぶ。

「夜は落ち着いた感じですが、昼間は明るい日差しが差し込んで、爽やかな雰囲気になりますよ」
「青と白で統一されてるから、爽やかなのね。インテリアも素敵」
「家具家電付のお部屋ですから、よろしければそのままお使いください」
「いいのかしら。なんだか私のために作ってもらったお部屋みたい」

 私は雪女の前でにっこり微笑んだ。

「二十年前のことを忘れずに、わざわざ当店を訪ねてくださったお客様のために、ちょっと頑張らせていただきました」
「嬉しいわ」

 はしゃぐように部屋を一回りした雪女が、千歳に向かって告げる。

「このお部屋、ぜひお借りしたいです」
「ありがとうございます」

 雪女の笑顔を見て、千歳も嬉しくなった。早く凌真にも知らせてあげたい。