その夜、店に行くと凌真が暇そうに椅子に座って、コーヒーを飲んでいた。

「おはようございます」
「おう」
「さっき501号室見せてもらったんですけど、素敵でしたね」

 凌真は何も答えない。でもそんなに不機嫌そうでもないから、満足しているのかもしれない。

「こんばんは」

 その時静かにガラス戸が開いて、雪女が現れた。

「いらっしゃいませ、雪女さん。お待ちしておりました」

 部屋の中がひやっと冷え、椅子に座っている凌真がちらっと千歳のほうを見る。
 千歳は小さく微笑むと、雪女に顔を向け言った。

「さっそくですが、雪女さんにお勧めしたいお部屋があるんです。ぜひご覧ください」

 嬉しそうな表情をした雪女を連れて、千歳は五階の部屋に向かった。