三週間後、部屋の工事が終了した。古かった和室の2DKが、広々とした1LDKに生まれ変わった。

「どうだい、お嬢ちゃん」

 出来上った部屋の前に立ち、太い腕を腰に当て、山嵐がにやっと笑う。

「すごく素敵です! まったく違うお部屋みたい!」
「うちの若いもんが頑張ってくれたからな」

 たしかに、山嵐が連れてきた若い職人さんたちは、毎日一生懸命働いてくれた。
 工事期間中はなにかと騒がしかったけど、千歳が頭を下げたおかげで、河童も「仕方ないね」と許してくれた。
 今日からはまた静かな環境が戻ってくるだろう。

「こんな素敵なお部屋だったら、私が住みたいくらいです」
「だったら凌ちゃんに頼むんだね。お嬢ちゃんみたいなかわいい子が頼めば、リフォーム代ぽんっと出してくれるだろ。工事は俺に任せな」

 山嵐が力こぶを作るようなしぐさをして、また笑う。千歳も笑って、もう一度部屋を見回す。

 凌真がデザインした部屋には、千歳が選んだ家具も搬入されていた。青いソファーにラグ、白いブラインド、木目調のテーブルや本棚。
 本当は日差しの明るいこの時間にお客様を案内したかったけど、雪女が来店するのは今晩だ。ドキドキする。

「山嵐さん、本当にありがとうございました。職人の皆さんにも、お礼を伝えておいてください。このお部屋ならきっと、お客様も喜んでくださると思います」
「そう願ってるよ」

 山嵐はそう言って、もう一度わははっと笑った。