「気持ちはわかりますけど……一応同業者との付き合いも大切にしないと」
「わかってるって。テキトーにこれからも付き合うよ」

 凌真は満足そうに笑って、貧乏神からもらったお金を数え始めた。

「それより貧乏神のじいさんにお茶でもいれてやれよ。まだそこにいるんだろ?」
「あ、はい」

 振り返ると貧乏神が、にこにこ微笑んでこっちを見ていた。

「じゃあみんなでお茶でも飲みましょうか」

 千歳が言うと、貧乏神は懐からなにやら包みを取り出した。

「ではこれも。おいしいお菓子じゃ。みなで食べよう」
「わぁ、これ老舗和菓子店の高級お菓子じゃないですか! いいんですか?」
「タヌキの前で見せると、食われてしまいそうじゃったからのう、隠しておいたんじゃ」

 貧乏神がいたずらっぽく、千歳にウインクする。千歳はくすっと笑って、凌真にお菓子を見せた。

「貧乏神さんにいただきました。凌真さんもこっちで一緒にどうですか?」

 凌真はちらっと千歳のほうを見て、ぼそっとつぶやく。

「まぁ、キュウリよりはましだな」

 そして田貫の座っていたソファーに腰掛けた。千歳はそんな凌真の姿を見ながら、くすっと笑う。

 素直に食べたいって言えばいいのに。ほんとこの人、ひねくれてるなぁ。
 でもいつもの凌真に戻って、千歳はどこかホッとしていた。

 そのあと三人で食べた高級お菓子は、舌がとろけそうなほど美味しかった。