「ねぇねぇ、千歳ちゃん。エントランス周りのペンキ、塗り替えたの? なんだか綺麗になってるじゃない?」
そんなことを言いながら、ソファーでコーヒーをすすっているのは、田貫エステートの田貫だ。
ずうずうしく今夜も、田貫はいざよい不動産にやってきて、どうでもいい話をしている。千歳にコーヒーまで注文して。まったく迷惑な男だ。
凌真はそんな田貫のことを無視しているので、仕方なく千歳が相手をしていた。
「ええ、物件は古いですが、大事に使いたいと思っていますので」
「それはいい心がけだね。心がけといえばさ、最近のあやかしはなに考えてるんだろうね。すぐクレーム言ってきたり、家賃滞納したりするやつ多くない? 今日もクレーム対応と家賃の督促で物件五軒も回ってさぁ……」
「いえ、うちの入居者さんは、クレーム言う方も家賃滞納する方もいませんけど?」
千歳が言うと、田貫は驚いたように目を丸くし、すぐにあわてて付け足した。
「まぁ、おたくは一軒しか管理してないんでしょ。うちはほら、管理物件が多いから大変なのよ」
その時、店の引き戸が控えめに開き、中に老人が入って来た。
そんなことを言いながら、ソファーでコーヒーをすすっているのは、田貫エステートの田貫だ。
ずうずうしく今夜も、田貫はいざよい不動産にやってきて、どうでもいい話をしている。千歳にコーヒーまで注文して。まったく迷惑な男だ。
凌真はそんな田貫のことを無視しているので、仕方なく千歳が相手をしていた。
「ええ、物件は古いですが、大事に使いたいと思っていますので」
「それはいい心がけだね。心がけといえばさ、最近のあやかしはなに考えてるんだろうね。すぐクレーム言ってきたり、家賃滞納したりするやつ多くない? 今日もクレーム対応と家賃の督促で物件五軒も回ってさぁ……」
「いえ、うちの入居者さんは、クレーム言う方も家賃滞納する方もいませんけど?」
千歳が言うと、田貫は驚いたように目を丸くし、すぐにあわてて付け足した。
「まぁ、おたくは一軒しか管理してないんでしょ。うちはほら、管理物件が多いから大変なのよ」
その時、店の引き戸が控えめに開き、中に老人が入って来た。



