翌日の夜、あの田貫から店に電話がかかってきた。店の電話が鳴るなんて初めてのことで、千歳はびくっとしながら電話に出る。
「お電話ありがとうございます。いざよい不動産でございます」
「あー、千歳ちゃん? ぼくだよ、ぼく。田貫エステートの田貫だよ」
千歳は顔をしかめる。今夜、凌真はまだ来ていない。ちょっと遅れると言っていた。
「お世話になっております」
「さっそくだけどさ。おたくの『メゾンいざよい』501号室。これからお客様連れて案内に行ってもいい?」
「えっ、あ、はい」
本当に来るんだ。
「じゃあ鍵借りに行くから。よろしくね!」
そう言うと、田貫はさっさと電話を切った。千歳は小さくため息をつく。
もし田貫の案内で501号室が決まれば、それはそれでよいことだ。凌真がせかす「満室」に一歩近づく。だけど田貫が本気であの部屋を紹介するとは思えない。
千歳が鍵を用意していると、あっという間に田貫の運転する営業車が店の前に停まった。車には、田貫によく似たタヌキのイラストが描かれている。どうやらこのタヌキが、店のトレードマークのようだ。
「お電話ありがとうございます。いざよい不動産でございます」
「あー、千歳ちゃん? ぼくだよ、ぼく。田貫エステートの田貫だよ」
千歳は顔をしかめる。今夜、凌真はまだ来ていない。ちょっと遅れると言っていた。
「お世話になっております」
「さっそくだけどさ。おたくの『メゾンいざよい』501号室。これからお客様連れて案内に行ってもいい?」
「えっ、あ、はい」
本当に来るんだ。
「じゃあ鍵借りに行くから。よろしくね!」
そう言うと、田貫はさっさと電話を切った。千歳は小さくため息をつく。
もし田貫の案内で501号室が決まれば、それはそれでよいことだ。凌真がせかす「満室」に一歩近づく。だけど田貫が本気であの部屋を紹介するとは思えない。
千歳が鍵を用意していると、あっという間に田貫の運転する営業車が店の前に停まった。車には、田貫によく似たタヌキのイラストが描かれている。どうやらこのタヌキが、店のトレードマークのようだ。