「なぁ、助けてくれよ、千歳。お前どこに住んでるんだ? 俺もそこに住まわせてくれよ」

 誠也がカウンター越しに千歳の手をぎゅっと握った。誠也のぬくもりが千歳の手に伝わってくる。

「俺には千歳しかいないんだ。頼む」

 千歳は強く唇を結んだ。誠也の向こうに座敷わらしの姿が見える。座敷わらしは千歳を見上げ、顔をふるふると横に振った。

「誠也……」

 千歳はそっと誠也の手をほどく。

「ごめんなさい。私はあなたを助けてあげられない」
「どうしてだよ! 俺はお前を助けてやっただろ? 一人じゃなんにもできないお前に、俺が声をかけて助けてやったんじゃないか!」
「私はっ」

 誠也の前で、千歳は顔を上げた。

「もうあなたがいなくても大丈夫。一人でやれる」
「はぁ?」

 誠也が顔を歪める。

「お前みたいな女になにができるんだよ」
「できる! お前みたいなって言わないで!」
「生意気言うな! お前みたいな何のとりえもない女、誰も必要としないんだよ!」
「ちょっと」

 千歳が唇をかんだ時、いつの間にか隣に立っていた凌真が口を挟んだ。