「あの……」
暇そうにスマホをいじっている凌真に声をかける。
「お客さんって……一晩にどのくらい、いらっしゃるんでしょうか?」
千歳の声に、凌真が面倒くさそうに顔を上げる。
「さあな。先週からこの店開いてるけど、俺には妖怪なんて見えないからな。来てるんだか来てないんだか、わかりゃしねぇんだ」
それでよく、お店を開こうと思ったものだ。
「お父さんが営業されていた頃は、どうだったんですか?」
凌真は少し黙ってから答える。
「さぁ。親父の仕事なんか興味なかったから、わかんねぇ。でも部屋が埋まってないってことは、繁盛してなかったんじゃねぇの」
繁盛って……だいたいこの世にあやかしというものが、どのくらいいるのだろう。千歳はいままでそんなものに、遭遇した覚えはない。
昨日公園でやけ酒をしてから、不思議なものが見えるようになってしまったのか。見えなくてもよかったのに。
「客が来なかったら、客引きでもなんでもしてきてくれよ。とにかく家賃収入がないと、あんたに給料も払えない」
「えっ、それは困ります!」
手取り二十万と言われたけれど、よく考えたらそれはただの口約束だ。本当にもらえるのかどうか、かなり怪しい。
「ほらっ、ぼうっとしてないで営業してこい。あんたあやかしが見えるんだろ?」
「そんなこと言われても……」
その時カラリと店のガラス戸が開いた。
「あっ、い、いらっしゃいませ!」
いつものくせで声を上げ、店の入り口を見る。しかしそこにいたのは妖怪でも幽霊でもなく……
「千歳……」
「誠也?」
青白い顔で千歳を見ているのは、昼間別れた誠也だった。
暇そうにスマホをいじっている凌真に声をかける。
「お客さんって……一晩にどのくらい、いらっしゃるんでしょうか?」
千歳の声に、凌真が面倒くさそうに顔を上げる。
「さあな。先週からこの店開いてるけど、俺には妖怪なんて見えないからな。来てるんだか来てないんだか、わかりゃしねぇんだ」
それでよく、お店を開こうと思ったものだ。
「お父さんが営業されていた頃は、どうだったんですか?」
凌真は少し黙ってから答える。
「さぁ。親父の仕事なんか興味なかったから、わかんねぇ。でも部屋が埋まってないってことは、繁盛してなかったんじゃねぇの」
繁盛って……だいたいこの世にあやかしというものが、どのくらいいるのだろう。千歳はいままでそんなものに、遭遇した覚えはない。
昨日公園でやけ酒をしてから、不思議なものが見えるようになってしまったのか。見えなくてもよかったのに。
「客が来なかったら、客引きでもなんでもしてきてくれよ。とにかく家賃収入がないと、あんたに給料も払えない」
「えっ、それは困ります!」
手取り二十万と言われたけれど、よく考えたらそれはただの口約束だ。本当にもらえるのかどうか、かなり怪しい。
「ほらっ、ぼうっとしてないで営業してこい。あんたあやかしが見えるんだろ?」
「そんなこと言われても……」
その時カラリと店のガラス戸が開いた。
「あっ、い、いらっしゃいませ!」
いつものくせで声を上げ、店の入り口を見る。しかしそこにいたのは妖怪でも幽霊でもなく……
「千歳……」
「誠也?」
青白い顔で千歳を見ているのは、昼間別れた誠也だった。