真夜中に営業している、ここ『いざよい不動産』は、あやかし専門の不動産店だ。
しかし今夜もお客さんの姿はなく……はっきり言って暇である。
「ふわぁ……」
パソコンに向かって作業している凌真が、今夜何度目かのあくびをした。
「はい。お茶をいれたのでどうぞ」
千歳は熱々の日本茶とキュウリの漬物を凌真の前に運ぶ。凌真はそれを見て顔をしかめた。
「またキュウリかよ」
「河童さんからの差し入れです。今日は漬物にしてみました」
千歳がにっこり微笑むと、凌真は小さくため息をつき、キュウリをつまんで口に入れた。
「どうです?」
「うん……まぁ、うまいな」
「よかった!」
「けど緑茶と漬物って……俺はじいさんかっ!」
「じゃあ今度なにかお料理作ってきます。私これでも料理得意なんですよ。凌真さんはなにが食べたいですか?」
すると凌真が機嫌悪そうに千歳を見た。
「お前さぁ、そういうセリフ、他の男にも言ってるんじゃねぇだろうな?」
「え、言ってますけど?」
「は? 誰にだよ!」
きょとんとする千歳の前に、凌真が身を乗り出してくる。
「河童さんとか、貧乏神さんとかです」
凌真はため息をつき、気が抜けたように身を引いた。
「まぁ、そいつらならいいや。人間の男じゃねぇからな」
「人間の男の人に言ったらダメなんですか?」
「ダメだ。俺以外は」
「どうしてですか?」
千歳が首をかしげると、凌真はあわてて顔をそむけた。
「どうしてもだ!」
そばで寝ている猫又がくくっと笑い、ひとり言のようにつぶやく。
「凌真の弱みはわかりやすいな」
凌真は猫又をにらみつけてから、パソコンを動かし始める。千歳は首をかしげたまま、そんな凌真の姿をながめる。
しかし今夜もお客さんの姿はなく……はっきり言って暇である。
「ふわぁ……」
パソコンに向かって作業している凌真が、今夜何度目かのあくびをした。
「はい。お茶をいれたのでどうぞ」
千歳は熱々の日本茶とキュウリの漬物を凌真の前に運ぶ。凌真はそれを見て顔をしかめた。
「またキュウリかよ」
「河童さんからの差し入れです。今日は漬物にしてみました」
千歳がにっこり微笑むと、凌真は小さくため息をつき、キュウリをつまんで口に入れた。
「どうです?」
「うん……まぁ、うまいな」
「よかった!」
「けど緑茶と漬物って……俺はじいさんかっ!」
「じゃあ今度なにかお料理作ってきます。私これでも料理得意なんですよ。凌真さんはなにが食べたいですか?」
すると凌真が機嫌悪そうに千歳を見た。
「お前さぁ、そういうセリフ、他の男にも言ってるんじゃねぇだろうな?」
「え、言ってますけど?」
「は? 誰にだよ!」
きょとんとする千歳の前に、凌真が身を乗り出してくる。
「河童さんとか、貧乏神さんとかです」
凌真はため息をつき、気が抜けたように身を引いた。
「まぁ、そいつらならいいや。人間の男じゃねぇからな」
「人間の男の人に言ったらダメなんですか?」
「ダメだ。俺以外は」
「どうしてですか?」
千歳が首をかしげると、凌真はあわてて顔をそむけた。
「どうしてもだ!」
そばで寝ている猫又がくくっと笑い、ひとり言のようにつぶやく。
「凌真の弱みはわかりやすいな」
凌真は猫又をにらみつけてから、パソコンを動かし始める。千歳は首をかしげたまま、そんな凌真の姿をながめる。