「私じゃ……だめですか?」

 凌真の視線が千歳に動く。

「私が凌真さんのそばにいるんじゃ……だめですか?」
「え……」

 驚いた表情の凌真と目が合って、千歳は急に恥ずかしくなった。

「べ、べつに深い意味はないですよ? ここでずっと働いてもいいですかってことです!」
「ああ……うん。そうだな……ちょっと無鉄砲だが、やっぱりお前はこの店に必要だし」

 凌真が頭をかきながら言う。千歳の心がふわっとあたたかくなった。

「わ、私、この店に必要とされてます?」
「まぁ、いてくれないと困る……よな」
「だったらいます! 二人で頑張りましょう? ねっ、凌真さん!」

 千歳が両手で凌真の手をとった。凌真は困ったように千歳から顔をそむけたが、その手を振り払おうとはしなかった。

「やったぁ! またちとせと遊べるね!」
「また夜中に散歩に行こうな」

 わらしと猫又が言った。

「ぼくも営業先に、このお店のこと宣伝しますよ」
「わしも微力ながら手伝わせてもらうぞ」

 河童と貧乏神もそう言った。

「しょうがないわね。危険な目にあったらすぐにわたしを呼びなさい。ぶっ飛ばしてやるから」

 雪女の声に、千歳が「ありがとうございます」と言って笑う。

「とりあえず、部屋探してるあやかしを連れてこい。そんでさっさと、このマンションを満室にするぞ!」

 凌真がそっと手を離して、千歳に言う。千歳は元気にうなずいた。

「わかりました! 探してきます!」
「あっ、わらしも行く!」
「おいらも付き合うぞ」

 わらしと猫又を連れて、千歳は店の引き戸を開ける。

「では営業に行ってきます!」
「おう、気をつけろよ」
「大丈夫です。ボディガードがいますから」

 千歳は凌真に笑いかけ、勢いよく真夜中の町へ飛び出した。