「俺さ、自分の家を設計して、お袋をそこに呼んでやりたいってずっと思ってたんだよ」
千歳は凌真の横顔を見つめる。
「それで建築士になったんだけど……ちょっと遅かったな」
凌真が胸元のリングをいじりながら、息を吐くように笑う。
「もう……誰もいなくなっちまった……」
椅子にもたれかかり、天井をながめて凌真がつぶやいた。
千歳はそんな凌真を見つめたあと、戸棚のファイルの隙間から一冊のノートを取り出した。
「凌真さん、これ見てください」
凌真がゆっくりと視線を向ける。
「朔太郎さんが、毎日欠かさずつけていた業務日誌です。最後のページに、これが挟まっていました」
千歳は凌真の前でそっとページを開き、一枚の写真を差し出した。何度も何度も繰り返し手にしてながめたような……古い家族写真だ。
「朔太郎さんは……凌真さんのお父さんは、最後まで家族のことを想っていたんだと思います」
凌真が静かに、その写真を手に取ってつぶやく。
「バカな親父だよ、ほんとに」
そして黙って見つめたあと、ふっと口元をゆるめて、その写真をそっとなでた。
「でもそんな親父を救えなかった俺もバカだ」
「あの……」
千歳は凌真に向かって言う。
千歳は凌真の横顔を見つめる。
「それで建築士になったんだけど……ちょっと遅かったな」
凌真が胸元のリングをいじりながら、息を吐くように笑う。
「もう……誰もいなくなっちまった……」
椅子にもたれかかり、天井をながめて凌真がつぶやいた。
千歳はそんな凌真を見つめたあと、戸棚のファイルの隙間から一冊のノートを取り出した。
「凌真さん、これ見てください」
凌真がゆっくりと視線を向ける。
「朔太郎さんが、毎日欠かさずつけていた業務日誌です。最後のページに、これが挟まっていました」
千歳は凌真の前でそっとページを開き、一枚の写真を差し出した。何度も何度も繰り返し手にしてながめたような……古い家族写真だ。
「朔太郎さんは……凌真さんのお父さんは、最後まで家族のことを想っていたんだと思います」
凌真が静かに、その写真を手に取ってつぶやく。
「バカな親父だよ、ほんとに」
そして黙って見つめたあと、ふっと口元をゆるめて、その写真をそっとなでた。
「でもそんな親父を救えなかった俺もバカだ」
「あの……」
千歳は凌真に向かって言う。