「そうだね、ちとせならできるよ」
「凌真くん、まさか千歳を追い出すわけじゃないでしょうね?」
「この店は千歳さんのおかげで成り立っているようなものです」

 あやかしたちが口々に言い始め、凌真はあわてて口を開く。

「なんだよ。俺はべつに追い出すわけじゃ……ただ千歳のことを心配して……」
「ありがとうございます。でも大丈夫です。みんながついてますから。それに凌真さんに言われた通り、これからは無茶しません」

 千歳がにっこり笑うと、凌真はむすっとした顔で黙った。

「じゃあいいよな? 千歳がここにいても!」

 猫又が凌真の膝に飛び乗って言う。凌真はそれを手で「しっしっ」と払う。そんな凌真に向かって千歳が言った。

「もしよかったら、凌真さんはここで設計の仕事をしたらどうですか?」
「は?」

 どいてくれない猫又と格闘しながら、凌真が千歳を見る。

「リノベの話をしていた時の凌真さん、すごく生き生きしてましたよね?」
「あれはお前に乗せられて……」

 凌真が照れくさそうに、また顔をそむける。

「凌真さんはきっと、この仕事が好きなんだなぁって、あの時思いました」

 しばらく黙り込んだあと、凌真がぼそっと口を開いた。