「ここだな」
狐の声が聞こえて、千歳はおそるおそる目を開けた。倒れているのは森の中だった。周りには木が生い茂っている。
「ここは……」
見覚えがある。そうだ、ここは、子どもの頃よく遊んだ、祖母の家の裏山だ。
千歳ははっとして、隣に倒れている凌真の体を揺さぶった。
「凌真さん! 起きてください!」
「ん……あれ……ここ、どこだ?」
「裏山です。祖母の家の」
千歳は立ち上がり、二本足で立っている狐の横顔を見る。狐は鋭い目つきのまま、あたりを観察している。静かに息をのむ千歳に、凌真が言った。
「じゃあ、ここがお前の山? 俺たち瞬間移動したのか?」
「……そうみたいですね」
凌真も立ち上がり、周りを見回す。頭の上を覆っている木々の隙間から、ほのかな日差しが差し込んでくる。
時折吹く風に足元の草木が揺れ、小鳥のさえずりも耳に聞こえる。
そういえば、店にいた時は夜だったはずなのに、ここは明るい。時間まで移動してしまったのだろうか。
「あ、そうだ。こっちに小川があるんですよ」
千歳はふっと思い出し、狐の腕をとった。狐がびくっと体を震わせ、その手を振り払う。
「馴れ馴れしく触るな! 人間のくせに」
「あ、ごめんなさい。でもこっちに来てください」
千歳が木と木の間をすり抜けるように走り出す。
同じような木が並んでいるだけの、道なき森の中だが、千歳には地図を見ているように方向がわかるのだ。
狐の声が聞こえて、千歳はおそるおそる目を開けた。倒れているのは森の中だった。周りには木が生い茂っている。
「ここは……」
見覚えがある。そうだ、ここは、子どもの頃よく遊んだ、祖母の家の裏山だ。
千歳ははっとして、隣に倒れている凌真の体を揺さぶった。
「凌真さん! 起きてください!」
「ん……あれ……ここ、どこだ?」
「裏山です。祖母の家の」
千歳は立ち上がり、二本足で立っている狐の横顔を見る。狐は鋭い目つきのまま、あたりを観察している。静かに息をのむ千歳に、凌真が言った。
「じゃあ、ここがお前の山? 俺たち瞬間移動したのか?」
「……そうみたいですね」
凌真も立ち上がり、周りを見回す。頭の上を覆っている木々の隙間から、ほのかな日差しが差し込んでくる。
時折吹く風に足元の草木が揺れ、小鳥のさえずりも耳に聞こえる。
そういえば、店にいた時は夜だったはずなのに、ここは明るい。時間まで移動してしまったのだろうか。
「あ、そうだ。こっちに小川があるんですよ」
千歳はふっと思い出し、狐の腕をとった。狐がびくっと体を震わせ、その手を振り払う。
「馴れ馴れしく触るな! 人間のくせに」
「あ、ごめんなさい。でもこっちに来てください」
千歳が木と木の間をすり抜けるように走り出す。
同じような木が並んでいるだけの、道なき森の中だが、千歳には地図を見ているように方向がわかるのだ。