「おもしろい。わたしの居場所を、お前が探してくれるというのか?」

 けれど次の瞬間、狐は大きな尻尾を千歳の前で振り払った。強い風が吹き、倒れそうになった体を後ろから凌真が支える。

「そんな場所、あるわけない! 人間はわたしを見るたび追い払った。わたしの住んでいた場所に家を建て、勝手に暮らし始めた。わたしは人間を憎んだ。憎んで憎んで、こらしめてやることだけを考え何百年も生きてきた」
「そんな生き方寂しいです。誰かを恨むだけで生き続けるなんて……」

 千歳はもう一度顔を上げ、狐に向かって声を上げる。

「あなたは、あなたのために生きるべきです!」

 狐が怒りをあらわにするように、全身の毛をさらに逆立てた。そして次の瞬間、大きな口を開け千歳に向かってくる。

「千歳さん! 危ない!」

 女の人の声。目の前にふわりと現れる白いワンピース。長い指から氷の破片が飛び出し、狐の体にキラキラと降りかかる。

「雪女さんっ……」

 呆然と立ち尽くす千歳の腕を、後ろから凌真が引っぱった。

「バカ! お前は無茶すんな!」
「でもっ……」

 顔を向けると、千歳たちの前に立ちはだかる雪女の後ろ姿と、動きを止めた狐の姿が見えた。
 狐は雪女に冷たい氷の破片を浴びせられ、体をふるふると振っている。