ベルベットの騎士

意味が判らないとこの男の顔を見ていると、検察官が代わりに教えたのだ。

『裁判中に法廷内で裁判官、検察官、検察官補、被告人、証人が死亡した場合、御前審判は無効とする』

つまり、裁判所法で国王の御前での死は禁忌である為、その裁判事態が無効となると言うのだ。

その結果、ウィルが釈放されるかどうかは解らない。しかし、次の裁判までは少なくとも時間稼ぎができる。その間に、合衆国がウィルを助け出してくれるかもしれないのだ。
「私はずっと長い間、ベルベットの騎士様を待っていました。でも、いくら待っても騎士様は来ない。多分、これから先も永遠に」
ウィルはフィナンシェが危険な行動を起こそうとしている事を察知した。

2人の廷吏に押さえつけられながら、猿轡を噛まされた口で、やめろと叫ぶ。だが、その声はくぐもった唸り声にしかならなかった。
「だから私が、畏れながらベルベットの騎士様になります!騎士になり、私という麻の奴隷を解放します!!」
観衆はやんやと歓声を上げた。

『早く死ね!』『不敬者に天罰を!』と、数限りない罵声が飛び交う。

「血を吐きながら悶え苦しむ私の姿をその眼に焼き付けるがいい……!残酷な貴族、陰湿な平民、そしてすべての苦しみの元凶・フランツ国王……!」

そう叫びながら彼女が丸薬を口に含もうとした、その瞬間だった。