ベルベットの騎士

「被告人の認否は確定した。引き続き、検察官は補強証拠を提出するか?」
「はい、裁判長。証人の証言を証拠として提出します」
裁判官と検察官のやり取りも、フィナンシェの耳には全く入らなかった。

彼女はただ、震えていた。だが、それは恐怖からでは決してない。

革靴の爪先が互いにぶつかって、小刻みにカタカタと鳴っているのが、自分でも解る。身体全体が火を噴くように熱く、腹の底から燃え上がるような怒りが沸き上がってくる。

許さない……許さない……!

私の大事なウィル様をこんな酷い目に遭わせたこの人達を……この国を……王様を……!絶対に許さない……!