ベルベットの騎士

「これより被告人に罪状認否の機会を与える。被告人はアドイス合衆国スパイである事を認めるな?否定するならば、明確に言葉で否定せよ」
裁判官が厳かに宣言したにも関わらず、法廷のあちこちからクスクスと笑いが漏れた。

当然だ。ウィルは猿轡を噛まされているのだ。“明確に言葉で否定”などできる訳がない。
「うーうーうーっ!!」
ウィルは激しく首を左右に振って、裁判官に何事か訴えようと足掻いた。
「静粛に!被告人は不規則発言を慎みなさい!明確に言葉で否定しなかった事から、被告人はスパイ容疑を認めた事とする!」
裁判官が木槌を一つ打ち鳴らすと、それを合図に観衆は弾けるように大笑いした。