ベルベットの騎士

控え室の扉から1歩出ると、ひんやりとした廊下に出た。5メートル程の廊下の突き当たりには扉がある。男の後ろを歩きながらフィナンは思う。
これから国王を喜ばせる為の盛大な茶番劇の幕が上がるのだ、と。検察官補が扉を内側に開いて、フィナンシェに自分より先に入るように顎をしゃくった。

むろん、レディファーストでは決してない。フィナンこそ、今日の出し物の主役なのだ。

彼女は深く息を吸った。そして胸に手を当て、例の小袋がある事を確認すると、イライラと扉を押さえて待っている男には目もくれず、明るい光が差す法廷へと歩いて行った。