ベルベットの騎士

フィナンシェの予想に反して、御前審判はウィルの逮捕翌日には開廷という、大変な慌ただしさだった。

御前審判は国王臨席の下、ウィルを王宮内にある最高特別法廷に引き立て正午から始まった。この審判は、国家反逆罪などの国家の安寧秩序に反した特別な犯罪のみを裁く特別裁判である。

裁判官は1名。弁護人は存在せず、検察官の主張を吟味し、裁判官の意見を聞きながら最終的には、国王が審判を下す。判決が不服でも被告人は上告できない一審制である。従って、この法廷で死刑判決を受けて生還した被告人は、建国以来1人もいなかった。

その頃、彼女は検察側の証人として裁判所内の検察官控え室にいた。