もう後戻りできない。
都まで馬車で半日かかる道程を、あの鳩はわずか1時間で到達する。都の伯爵邸に帰った鳩の“手紙”をあの侍女が見れば、すぐに軍隊がこの館に押し寄せてくる。
そういう手筈だった。
赤い紙は緊急事態を知らせる合図。文字を書けないフィナンにもできるように侍女が用意した物だ。
「今日中にはウィル様は捕らえられ、早ければ数日後に国王様ご臨席の御前審判が開かれる」
秋風が開け放った窓から、さらさらと落ち葉を散らしながら吹き込んでくる。
「貴方の為に、こんな事しかできない私をお許しください……ウィル様……」
フィナンシェは頬に残った涙を手のひらでぬぐいながら、刷毛で引かれたような薄雲がたなびく秋空を見上げ続けた。
都まで馬車で半日かかる道程を、あの鳩はわずか1時間で到達する。都の伯爵邸に帰った鳩の“手紙”をあの侍女が見れば、すぐに軍隊がこの館に押し寄せてくる。
そういう手筈だった。
赤い紙は緊急事態を知らせる合図。文字を書けないフィナンにもできるように侍女が用意した物だ。
「今日中にはウィル様は捕らえられ、早ければ数日後に国王様ご臨席の御前審判が開かれる」
秋風が開け放った窓から、さらさらと落ち葉を散らしながら吹き込んでくる。
「貴方の為に、こんな事しかできない私をお許しください……ウィル様……」
フィナンシェは頬に残った涙を手のひらでぬぐいながら、刷毛で引かれたような薄雲がたなびく秋空を見上げ続けた。



