ベルベットの騎士

「判った……。やっと貴方が仰りたい事がわ判りました。ウィル様……」

人を諦めさせるこの国。

奴隷だから、殺されるからと、苦しい事を平気な顔で我慢している私に、教えようとして下さったのですね……。

この国の仕組みを……。

人を苦しめて、いい思いをしている人がこの国を作っているのだと……。

生まれながらの身分はそれが当たり前だと、みんな王様に思い込まされたもの……。
「そして奴隷の私は物じゃない……人間なのだ、と……」

涙が零れてくる。

あの時、ウィル様が私に真剣な眼差しで伝えようとした事が、ようやく理解できたのだ。

初めて私を本気で心配してくれた人。

何の見返りも求めなかった初めての人。

ウィル様……今そのお方が危機に瀕している。

だからこそ、そのご恩に報いる為にも、私がこの手でやらなければならないのだ。