ベルベットの騎士

夜になるのを待って、馬車で国境を目指す事も時間があれば可能だ。

しかし、ウィル様に不信感を持たれた事で世話役は慌て出した。自分の不手際でウィル様の監視に手抜かりがあれば、自分が役所から処罰される。

だから侍女様を飛び越えて、ウィル様の暗殺を直接私に命じたのだ。

フエゴにつつかれて逃げ出したが、逃げた先が都とは限らない。もしも、近郷の村役人や村民に呼び掛けてこの館を襲われでもしたら私1人ではとても太刀打ちできない。

それに逃げるにしても、そもそもこの館には馬車がない。ウィル様の逃亡防止のためだ。

近くの村から借りるか盗むにしても、近郷の出身というあのコックの態度を見れば、とても周囲の村人が私やウィル様に協力してくれるとは思えない。