ベルベットの騎士

フエゴの小さなボンボンの付いた頭の飾り羽を見つめながら、フィナンは小さなため息をついた。

「人間と違って鳥さんだから、長い間言葉を覚えているのはムリよね。ごめんね」

フィナンはそういうとフエゴの背中を優しく撫でた。滑らかでつやつやと黒い光沢を放つ羽毛は、まるで極上のベルベットのような触り心地だった。暖かくてうっとりと、ずっと触っていたい、素晴らしい手触りだ。

もっとも、彼女自身はベルベットのドレスを着るどころか、触れた経験すらなかったのだが。
「それから……。助けてくれてありがとうね。とっても嬉しかったよ。今まであんなにひどい目にあっても、助けてくれた人なんて誰もいなかったから。いても必ず何かしら嫌な代償を求められて……。初めてよ……あなたとウィル様だけが本当に私を助けてくれた。だから今度は、私がフエゴとウィル様を助けるからね」