ベルベットの騎士

「君にどう言えば判って貰えるんだろう。君に怒った訳じゃないだ。フィナンをそんな風に諦めさせた、この国に無性に腹が立つんだ」

ウィル様はコックが来る前の、あの時の話をされているのだ……。

フィナンは、一息入れて黙り込んだフエゴの、次の言葉を辛抱強く待った。しかし彼の次の言葉は期待に反して、文脈が繋がらないものだった。
「ベルベットの騎士は、君が望む救世主ではない」
「えッ……!?」
「破壊と殺戮しかもたらさない侵略者。君が焦がれる姿でもない」
フィナンの背に冷たい汗が流れる。

これは本当にウィル様の言った言葉なの?だって、あの方は私がお話するまで、建国神話をご存知なかったはずでは……?