「そんな所に座り込んでないで早く立ってよ！お家に入ろう！」
「はッ……!?」
虚ろな瞳で独り言を繰り返していたフィナンは、突然のウィルの声に目を覚ましたようにビクッと身体を動かした。

ウィル様がいらっしゃったのだ。こんなみっともない姿をお見せしてはいけない。

それにあの男が万一戻って来たら大変だ。早くこの方を逃がさなければ……！

ウィルの快活な声に、フィナンシェはすっかり正気を取り戻した。あちこち痛む身体を無理矢理に起こして、とにかく地面に座り込む。
「ウィル様、あの……？」
両手を地面について何とか上半身を起こし、頭を上げた。

だが、声がした方向にはフエゴが立っているだけで、肝心のウィルの姿がない。