ベルベットの騎士

「……の名前はフィナンシェ……金銀と同じ価値のある女。私の名前はフィナンシェ……お金持ちという意味……」
それは過酷な環境を生き抜くための励ましの言葉なのか。それともまやかしの慰めを呪う、ささやかな呪言なのか……。

ぶつぶつと独り言を繰り返している彼女は、フエゴに気づいていない。

ただ、あの男がまた戻ってこない事を祈りながら、バラバラに砕けそうな自分の心と身体を必死でつなぎ止めていたのだ。