ベルベットの騎士

「ギャア!?」
その時、唐突に世話役がくぐもった悲鳴を上げた。
夢中になって暴力を楽しんでいた男は、いきなり真っ黒な影に顔面を襲われたのだ。
「ギイィィーーー!!」
頭の飾り羽を逆立て、カンカンに怒ったフエゴが、世話役に飛びかかって行ったのだった。目といわず鼻といわず、手当たり次第に顔面をつつき回すフエゴ。

男が両手で払いのけようとすると、すかさず頭のてっぺんに飛び移り、鋭い蹴り爪で血が出るほどガリガリと引っ掻いた。
「痛い!やめろ!」
やめろと言われてやめるフエゴではない。

男の髪を、太くて丈夫な嘴で嫌というほど引き千切る。
「た、助けてくれぇー!」
世話役はとうとう恐怖に駈られて悲鳴を上げると裏庭を走り出た。