侍女はそう言うと、出し抜けに2度手を叩いた。すると、呼ばれるまで息を殺していたのか、薔薇の垣根に身を隠していた女が少年の前に現れた。白のキャップに、黒のワンピース。その上にフリルの付いた白いエプロンドレスを着たメイドだった。
「この者が若様の身の回りのお世話を致します。何なりとお申し付け下さい。そうそう、この女に名付けをしてやって下さいませ。きっと涙を流して喜びますわよ」
侍女は殊更、女という部分にアクセントを置く。すると、メイドの肩がビクリと動いた事を少年は見逃さなかった。