ベルベットの騎士

「本当かな?それにしては僕の事をスパイ呼ばわりしたり、まるで伯爵の威光を嵩に着て取締りをしていたみたいだけど?」
一瞬、世話役が黙り込む。この時、図星を突いたのだ、とウィルもフィナンも確信した。
「いえいえ、それは考え過ぎでございますよ、若様。このような粗野な者が伯爵家のお抱えであろうはずがございません。若様のお目汚しになる係る不届き者は早速、解雇致します」
男は床に突っ伏して気絶しているコックの襟首を両手で掴むと、ふーふー言いながら勝手口から引き擦り出して行った。