「到着です、若様」
田園地帯を駆け抜け、馬車が森の入口にある館に着いたのは夕方近くであった。侍女に促された少年は馬車から降りると、うーんと伸びをする。
「わぁー、空気がいいな」
少年は胸一杯に深呼吸した。それと同時に凄い田舎に隔離されたなと周りを見回した。

2階建ての館の背後には鬱蒼とした森が広がる。対して、館の前面には一面に麦畑が広がるが人気は全くない。

のどかな田園風景に見えるが都からは馬車で半日もかかる僻地でもある。
「伯爵家の狩猟用の別荘です。手狭ですがごゆっくりお寛ぎ下さい」