ベルベットの騎士

「出て行けよ、お前……」
そのうえ在ろうことか、ウィルまでもが凄みのある声で命じてくる。フィナンシェはテーブルを見つめたまま、怖くて顔を上げられない。

とうとう私は、この小さな主にまで嫌われてしまったのだ。

そう思うと、手にした小皿が震えてカタカタと鳴ってしまう。悲しみと恐怖で、顔は火を吹くように熱いのに全身に冷たい汗をかいている。

動く事もできず、震えて俯いていると、コックは苛立ってまたも、わめきたてようと口を開きかけた。

しかし、今度はウィルがそれを許さなかった。