「あの、若様は何を作」
「僕の事はウィルって呼んでよ!さあ、お湯が沸くまでお話しようよ」
少年は台所の隅にあった粗末な木の椅子を2脚持って来ると、遠慮する女と並んで座った。
「ねぇ、お姉さんのお話聞かせて」
「私の?」
「うん!夢や希望をさ。僕は菓子職人になりたいんだ!それに甘いお菓子は人を笑顔にしたり幸せにしたりできるんだよ!ねぇ、錬金術って知ってる?僕、錬金術もお菓子も好きだから錬金菓子職人になって、大陸中に店を出したいんだよ!お菓子を売るだけじゃなく、お茶とお喋りを楽しむお店!凄いでしょ!?」
息もつかずに一気に捲し立てる少年に、女は首を振ろうとした。だが小さな希望なら私にもあると思い直す。取るに足りないい石ころのような希望なら……。
「騎士様を待っています」
「え?誰?」
目を丸くする少年に、女は少し得意げにこの国に伝わる建国神話を語り始めた。