ベルベットの騎士

裁判所建物が燃え落ちたその後、都は1時間で“空飛ぶ家”の大規模編隊の空爆によって僅かな首都機能を残し、焦土と化した。

フィナン達は空爆の間、ウィルの展開した錬成防御陣により、辛うじて難を逃れた。

「よく頑張ったな、ウィル」
「あ!お父さん!」
空爆が終了するや、最も大型で威圧的な“空飛ぶ家”は、錬成防御陣のすぐ近くに降りてきた。

彼は迷わず、迎えに来た老紳士へ駈け寄って行く。その後ろ姿にフィナンシェは大きな安堵と微かな寂しさを感じた。

ここでお別れすれば、もう二度とこの陽気な少年に会うことはないだろう。その寂しさは徐々に鋭い痛みを伴って、彼女の胸をギリギリとえぐる。

だが、これでいい。

私はウィル様を守り切れたのだから。生まれて初めて感じる、何かを成し遂げた、この誇らしさ。私はこれだけで後の一生を胸を張って生きて行ける。
「君が息子の恩人のお嬢さんだね?」
少年とひとしきり喜び合った紳士は、改めてフィナンに視線を移した。