ベルベットの騎士

国王は目を見開いてはいるが、その茶の瞳は虚ろで何も見てはいなかった。顔には血の気がなく、幾重にも深い皺が刻まれ、皮膚は粉を吹いて白く乾燥している。

だがむろん、死んでいる訳ではない。

彼はウィル達が見ている目の前で両手を床に着けて、ゆっくりと上体を起こした。
「久し振りだね、ヨハン。いや、絹の騎士……。我が弟よ……」
フィナンはウィルの言葉に息を飲む。
「今、なんて……」
「フィナンシェ……今、君の目の前にいるこの男は絹の騎士の子孫じゃない。ヨハン・フリードル・フランツ永世王はその名の通り、死ぬことのなかった大昔の絹の騎士その人さ」